第237話 上へ、上へ!

「屋上?」

 思わずオウム返しに繰り返す。

ウゲェ~

思いっきりため息が出た。

 まめができるな。

 手が痛くなるな。

 そもそも、上り切れるだろうか?

 手がすべったら…大ケガするよな?

(骨折とか?

 というか…もしかして、死ぬ?)

次から次へと、裕太の頭には、イヤな想像が駆け巡る。

(あ~あ!

 なんで、行くって、言っちゃったのかなぁ)

 ホント、バカだなぁ~、ボクは!

たちまち裕太は、後悔をする。


 だがジュンペイは、とてもケロッとした顔で、

「大丈夫!木登りすると思えば、こんなもんだろ?」

まったくもって、平気な顔をしている。

おもむろに袖をまくりあげ、靴を脱ぐと…

その靴を、無造作にリュックに入れる。

「やっぱり靴下も、脱いだ方がいいかなぁ」

そうつぶやくと、楽しそうに靴下まで脱ぎ始める。


(あ~あ)

再びため息だ。

(ここまで来たら…付き合わないと、いけないだろうなぁ)

 ようやく裕太も腹をくくる。

すぐにジュンペイの真似をして、靴を脱ぐ。

「よし、来た!」

ジュンペイは、手のひらに、ペッペッと唾をすり込むと、

「さぁ、行くぞ!」

裕太に向かって、声をかける。

「うん」

覚悟を決めて、裕太もジュンペイの隣に立つ。

「えいっ!」

ロープに飛び付くと、ジュンペイはそのまま、勢いをつけて、

するすると上り始めた。

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