第235話 渾身の力をこめて!

 ひょいっとてっぺんに向かって、ジュンペイはロープを

投げつける。

ヒュン!

風を切る音がして、ロープがまるでヘビのようにまっすぐに、

階段の先まで飛んで行く。

「あっ、あぁ~!」


 1回目は、無残に失敗!

あとちょっと…というところで、スルリと手すりをすり抜ける。

「あぁ~何か、フックみたいなのがあれば、違うんだけどなぁ」

先の方に、石を巻き付ける?

そう思うけれども、1度出るとまた、鍵がかかるとなると、

それはそれで厄介だ。

(まさか、オートロックなのか?)

 バカげたことだが、裕太はふと疑った。

 それでも今度は、さらに腕に力をこめて、大きな円を宙に描く。

「よぉし、今度こそ、行くぞ!」

さらに声を上げて、ボルテージを上げると、カウボーイのように、

勢いよくロープを投げつける。

シュルルルルル…

「頼む!届いてくれ!」

思わずジュンペイの声が、甲高く響く。

裕太は両手を、ぐっと握り締めると、ロープの行方を目で追った。

ヒュン!

今度はまっすぐに、階段の上の踊り場に向かって、放たれる。

「頼む!」

2人は拝むようにすると…

かろうじて、手すりの端の太い木の柱の所に、ストンと引っかかった。

「よっしゃあ~!」

「やったぁ~!」

思わず2人は声を揃えて、その場でハイタッチをした。

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