第296話 キミの目的は?

 ドンドンドン…

 パラパラパラ…

豪華な家の割りには、この裏側は、案外普通の造りだ。

(しかも、壁の中だし…)

巨人が壁を叩くたびに、壁土が落ちてくる。

ここも、どのくらいもつか、わからない。

「いいから、早くこっちへ!」

 慣れた様子で、ジャックはスルッと穴の奥へと向かう。

巨人の指が、執拗に追いかけて来るけれど、それを避けて

ダッシュで3人は、さらに奥へと目指す。

(それにしても、ここって…カラクリ屋敷みたい)

驚く裕太をよそに、とにかく一刻も早く、ここを脱出しよう…と、

ジャックの誘導に従う。


 しばらくすると、あきらめたのか…ようやく巨人の攻撃が

おさまった。

「ありがとう、助かった!」

 心をこめて、裕太はジャックに向かって、笑顔を見せる。

ジャックは少し照れたように、鼻の頭をぐぃっとこすると、

「なぁに、アイツの凄まじい雄たけびが、聞こえてきたからなぁ。

 これは何かやらかしたな、と思ってさ」

あはは…

ジャックはニヤニヤしながら、ジュンペイを見る。

「それにしても、おまえ、スゴイなぁ。

 あの巨人をやっつけちゃうなんて!」

ジャックの表情が、和らいでいる。

裕太のことを、見直したようだ。

「あ、それは違うよ。

 あれは、ジュンペイが!」

ここはジュンペイの名誉のため、ハッキリさせないといけない。

ボクはただ、逃げただけ…

そう言うけれど、当のジュンペイは、そういうことには全く

興味がないらしい。

いつの間にか、裕太たちの前を歩いている。

「でも…よく、ボクたちのこと、わかったねぇ」

そう言うと、ジャックの目がキラリと光る。

「まぁ、別に…たまたま通りがかっただけだし」

そう言いながらも、ジュンペイの後ろ姿を目で追っていた。

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