第297話 ただより高いものはない

 どうやらジャックは、この家の中のことに、かなり精通しているようだ。

「危ないところを、助けてくれてありがとう!」

ペコリと裕太が頭を下げると

「なんの、なんの」

ジャックはやけに、ニヤついている。

上目遣いで、チラリと裕太を見ると

「その代わり…交換条件があるんだ」

悪いがな、と急に姿勢を正した。

えっ?

「交換条件?」

へっ?という顔になり、裕太はポカンとする。

そんなの、聞いてないよぉ~と、困った顔で、ジュンペイに助けを求める

ように振り向く。

「なんだよ」

ブスッとして、ジュンペイはジャックを見る。

ジャックは相変わらず、ニヤニヤとした顔で、

「決まってるだろ?」

ジュンペイの手元を見つめた。

「なに?」

気味が悪いなぁ~

ジュンペイは思い切り、眉をしかめる。

「もちろん…そのハープと交換だ」

澄ました顔で、ジャックはハープを見る。

「交換?何と?」


 お礼に…というのでは、ないのか?

まさか、今までも、それ目当てだったのか?

裕太も急に冷めた顔つきになる。

「もちろん、交換だ」

コクリとうなづくと、ジャックはポケットに手を突っ込んだ。

「なんだ?」

まさか、脅すというのか?

身がまえる裕太に、ジャックはぐぃっとこぶしを突き出す。

「えっ、なに?」

「なんだよ」

ジャックは黙ったまま、ゆっくりと指を開くと…

そこには、裕太のポケットに入っているはずの、イヌブエが乗っていた。

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