第298話 だまされた気分…

「えっ、笛?」

「どうして?」

 今の今まで、ポケットに入っている…と思っていたのだ。

(まさか…盗んだのか?)

たちまちジュンペイが、イヤな顔をする。

だけどジャックは、澄ました顔で、

「落ちてたから、拾ったんだ」

得意そうに言うので

「そうか?ありがとう」

裕太はそう言うしか、なかった…

「でもね、これ、絶対に役に立つから!」

目をキラキラさせて、裕太に向かってニィッと笑う。

「はい、だからこれと交換!」

なんだか、だまされたような気がした。

「交換って…返してくれただけじゃん!」

だがジュンペイは、どうも納得がいかないらしい。

「それでも、これはこれ!

 約束は、守ってもらおう」

なぜだかジャックは、強気だ。

じぃっとジュンペイの手元を見るので、

「ほら」

裕太は、ジュンペイを突っついた。


「え~っ!」

だが不満そうに、ジュンペイはハープをしっかりと抱きしめて、

離さない。

「ダメだよ、助けてもらったでしょ?」

裕太がジュンペイの腕を、さらに突っつく。

「そうそう」

ニヤニヤしながら、ジャックもうなづく。

「え~っ!」

口をとがらせるジュンペイに、

「ハープを持って、トオを探検出来ないでしょ?」

さらに裕太が言う。

「う、うん…」

はぁとため息をつく。

「さぁ」

裕太にうながされ、渋々ジャックにハープを差し出す。

「君たち…あのトオを登るのか?」

さっさとハープを受け取ると、ジャックは背中のあの不思議な布袋に

しまい込む。

「あ~あ」

まだ未練がましく、ジュンペイが声をもらす。

「そうだよ!てっぺんを目指しているんだ」

裕太は嬉しそうに言い、

「なっ」

ジュンペイの肩に手を乗せた。




 

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