第28話 あれは何?鳥か?ロボットか?スパーマンか?それはないな!

 トオを見上げる子供たち…何かが目に入る。

「あれは、なんだ?」

「あれって、ロボットか?」

口々に騒ぎ立てる。

目をこらして見ていたジュンペイは、

「えっ、ホンモノじゃあないの?」

ひたすら目で追う。

裕太もつま先立ちをして、見るも…

相手は鳥だ。

しかもかなり離れている。

だが2人は目を見合わせ、

「あれだ!」とうなづき合った。

まずはジュンペイ。

「あっ」

裕太がうなづく。

「あれ、取って!」

「そうだ、あれだ!」

目をキラリと光らせて、ギャーギャーとさらに騒ぎ立てる。


 うるさいなぁ、今度はなんだ?

さすがに気になったのか、ボディーガードが2人に近付き

「どうした?」と聞く。

 その時、キラリ…と屋上に、何かが光った…と思うと、

一目散にこちらに向かって、まっすぐに何かが飛んで来る。

「鳥だ!」

「鳥!」

「つかまえろぉ」

 ピョンピョンと跳ねながら、ジュンペイが追いかける。

「ムリだよぉ。追いつけるわけがない」

裕太はそんなジュンペイに、合図を送るも…

しかしジュンペイはダッシュして、今度は垂直飛びに跳ねる。

「つかまえるんだ!」

「オジサン、肩を貸して!」

鳥は子供たちをからかうように、低空飛行をしたかと思うと、

ヒラリと身をかわす。

「オレ?」

「だがら、早く!」

ジュンペイは道にしゃがみ込むと、目の前に落ちていた

虫取り網を手にすると…その網を、ブンブンと振りまわした。

「届かないよぉ~オジサ~ン!」

振りまわしながら、ジュンペイが叫ぶ。

「おまえたち、何をやっているんだ?」

いきなりサキアの声が聞こえた。


「あっ、サキア様!」

 ボディーガードは、あわてて手をズボンではたく。

「ミスター、これはどういう騒ぎ?」

完全に呆れた顔をする。

しまった!

見られてしまった!

恥ずかしそうに立ち止まる、ボディーガード。

やっぱ、ムリなのか?

裕太はややあきらめかけていた。

スルスルと子ザルのように、ジュンペイがボディーガードの肩

から、滑り降りて来た。


 それでもジュンペイはまだ、あきらめてはいなかった。

再びダッシュをすると、垂直飛びに飛び跳ねる。

「だから、別の方法を考えようよ!」

裕太がジュンペイに向かって叫ぶ。

「あっ、そうだ!」

思いついたように、ジュンペイが裕太に向かって叫ぶ。

「ロープを貸して!」

「えっ?」

「ロープ!持ってるだろ?」

早くしないと、今度こそ逃げられてしまう…

ジュンペイはイライラしながら、裕太をせかす。

 どれだけ強度があるのか、わからないが…

試す価値はありそうだ。

ジュンペイは素早くロープの端っこに、小ぶりの石をくくりつけると、

ブンブンと振ってから…鳥目掛けて、勢いよく放り投げた。



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