第27話 飛べ、飛ぶんだ!トオに向けて!

「はぁっ?」

 トオが生きている、と言った裕太の意味が、わからない…

ジュンペイが、笑い飛ばそうとするけれど、裕太の視線の強さに、

笑いをあわてて引っ込めた。

そうしてつられたように、その不思議なトオを見上げると

「そうなのか?」

今度は真面目な顔になっていた。

「それにしても、あれって何階建てなんだ?」

 見上げるけれど、身体がうんとそらさないと、てっぺんまでは見えない。

「さぁ?50階なのか、100階なのか… 

 数えたことがないから、わかりませんね」

いつの間にか側に立っていたボディーガードが、隣で一緒に

見上げている。

「それにしても、でっかいなぁ」

「こんなの…てっぺんまで行こうと思ったら、何日かかるか、

 わかんないぞぉ」

裕太は真剣な目で見上げる。


「そうだ!」

 ジュンペイはいたずらっぽい顔をすると

「ロッククライミングとかは?」

いきなりふざけて、石の壁に取り付き、爪を立てようとする。

「うーん、固いなぁ。

 とっかかりもないし、滑ってしまうよ!」

「じゃあ、吸盤は?

 デッカイ吸盤で、スパイダーマンみたいに!」

裕太も次第にのってきた。

「いや、相当強力なものじゃないと、ムリだよなぁ」

「忍者は?かぎづめ!」

「そんなの、どこにあるんだよ!」

「武器屋さん!」

「あるかぁ!」

 うーんと2人はうなり、何かいい方法がないかと、

上ばかり見あげている。

そんな時…一羽の鳥が窓から飛び出して来た。

「あれ?窓なんか、あったっけ?」

見た目は、のっぺりとした壁だと思っていたのに、

まるで吐き出されるようにして、一羽、また一羽と

トオから吐き出されてきた。

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