第26話  あのトオ、ヤバいトオ?

 直前になり、警戒アラームが、ピコピコ点滅してきた裕太…

だがジュンペイは、そんな裕太には気付かずに、

「うん、そうだね」

素直にサキアの後に、ついて行く。

(これで、いいのか?)

裕太は自問自答する。

もしこのまま、中に入ったら…

一体ボクたち、どうなるんだ?

それよりも、元の世界に戻れるのか?

そう思った瞬間、裕太の中で何かがはじけた。

「ちょっと、タンマ!」

思わずジュンペイの前に、立ちはだかって叫んでいた。


「はぁっ?」

 ピタリとジュンペイは、その歩みを止める。

「なんでタンマなんだ?

 せっかく来たのだから、受け付けだけでも、済ませようぜ!」

訳のわからないことを言う裕太に、ややイラついた顔を見せる。

(だが、ダメなんだ!)

裕太の中で、なぜだかさっきから、黄色信号がピコンピコンと

点滅している。

 これはなんだ?

 予感なのか?

「いや、あわてなくてもいいんじゃない?

 それよりも…万全の態勢を整えてからでも…」

バッと両手を広げ、何とか説得しようと試みた。


「何なんだ?」

「どうした?」

 必死の形相の裕太を見て、2人の前に通りがかりの人たちが、

集まって来た。

ジュンペイは腰に手を当てて、立ちすくむと、

「なんだ、おまえ…

 怖じ気づいたのか?」

からかうように言う。

「そうじゃないよ。

 そうじゃないんだ。

 ろくに準備もしていないのに… 

 行ったらきっと、ヤラレルかもしれないだろう?」

泣きそうなくらいに、顔をクシャクシャにして、裕太は言う。

「なんだよ…今さら」

ジュンペイはチェッと舌打ちをすると、頭をくしゃくしゃに

かきむしる。

「あ~、もう!」

ひと声吠えたあと・・・

「しゃあないなぁ~」

わざと大きな声を上げた。

「ごめん」

裕太はジュンペイに向かって、手を合わせる。

「だけど、どうしたんだ?」

 いつもはノリのいい裕太なのに、こんな風に言うのは、

何か理由があるのだろう。

そうジュンペイは考えた。


「いや、あの建物がさぁ…

 何かヤバイ気がする」

裕太はさらに、真剣な顔になった。

「なんだよ、そりゃ」

ジュンペイが笑うのを…

裕太は真剣なまなざしで、トオを見上げる。

「どうした?」

ジュンペイも、その隣に並ぶ。

「いや、あのトオ…生きている気がするんだ」

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