第29話 追いかけるのが花?その鳥、捕まえるべからず!

 グルングルンとロープを振りまわし、勢いをつけると、一気に

投げつける。

凄まじい勢いで、飛び上がった裕太とジュンペイが、祈るような

顏で、その様子を見守っている。

ヘビのように曲がりくねったロープが、鳥の胴体に当たると、

奇跡的にグリンと巻き付いた。

「あっ、やった!」

 ジュンペイは垂らしておいたロープの端を、急いでグイとつかまえる。

「よし、つかまえるぞ!」

ぐぃっとロープの端をつかむと、一気に勢いよく飛びついた。


 その機械仕掛けの鳥も、たまったものではない。

本来の機能は、伝書鳩のように、その記憶を取り込み、センターに送り届ける

目的のために、作られたものだ。

それなのに…まさか投げ縄をされて、子供にぶら下がられて、

鳥にとっては、踏んだり蹴ったりだ。

異変を感知して、ピーピーと合成音の鳴り響く中、

それでもジュンペイはおかまいなしに、

「裕太ぁ~おまえも来いよぉ」

嬉しそうに、大きな声で叫んだ。


「こらぁ!」

 だが通りの向こうから、今しがた別れたばかりのサキアが、

ものすごい血相をして、ジュンペイの方まで、走って近付いてくる。

身近に迫る危険を察知したジュンペイは

「ゲッ!見つかった!」と叫ぶ。

ヤバイ!

ジュンペイはロープを握ったまま、一目散に駆け出す。

アスリートのごとき走りで、サキアは漆黒の髪をなびかせて

「待てぇ~」

鬼女のごとき顔をして、飛び掛からんばかりだ。

ひぇ~~~

「おまえ、メモリートリーに、何をする!

 壊れたら、どうしてくれる!

 ぶら下がるな、落っこちるぞぉ!」

追いかけながらも、かぶっていた帽子を、ジュンペイ目掛けて

投げつけた。


 うわぁぁぁぁぁぁぁ

 クルクルクルクル

弧を描きながら、その黒い帽子が円盤のように迫ってくる。

「げっ、何か来る!」

ジュンペイは、大きな声で叫んだ。

南無三!

裕太は思わず、両手で目をふさいだ。


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