第30話 あの人は、何者?

 サキアの投げた帽子は…まるでUFOのように、まっすぐに

ジュンペイの方まで飛んで来ると、まさにクリーンヒット!

機械仕掛けの鳥に見事にぶつかり、

ヒュン!

絡んだロープを振り落とすと、スルンと飛び去って行く。

あっ!

それと同時に、引っかかりをなくしたロープは、そのまま

真っ逆さまに、地面めがけて落ちてくる。

ギャー!

バタバタと手足を振りまわすジュンペイを見て、

「もう、世話が焼けるなぁ」

サキアはそう言うと、ピューと口笛を吹いた。

するとみるみる帽子のつばが大きく広がり、今度はジュンペイの方へ

まっすぐに飛んで来る。

丁度大きな灰皿型の円盤の大きさになる。

「えっ」

驚く子供たちを尻目に、

「これは、ツケだからな。

 特別サービスとして、ツケておくからね」

そうサキアが言うのと、ストンと帽子の頭の部分に、ジュンペイが

収まるのとが、同時だった。

ほぅ~っと裕太はため息をついて、その場に立ち尽くした。

ジュンペイを乗せた帽子は、ふわふわとその場を旋回した後、

ゆっくりとホバリングして、下りて来た。


「ちぇ~せっかくつかまえたのにぃ」

 あんな目にあったというのに、ジュンペイはまったく懲りた様子もなく、

ブツクサと文句を言う。

「もう2度と、あんな真似…しないでちょうだい。

 次は助けないわよ」

スッと足音もたてずに、サキアはやって来る。

みるみる帽子は、元の大きさに戻ると、ジュンペイは帽子から

弾き飛ばされた。

ポトリ…と、下に落ちた帽子を拾い上げると

「もっと真面目に、作戦をたてなさいね」

いつもの冷静な顔つきになり、そう言う。


 こっぴどく叱られるかと思いきや、そうひと言言ったきり、

サキアは何事もなかったかのように、スタスタと立ち去って行く。

「あっ、ちょっと!」

拍子抜けした裕太は、もう行っちゃうの、とあわてて追いかける。

ありがとうも、ごめんなさいも、何も言ってはいない…

だけどサキアの背中に向けて、放ったのは、

「ねぇ、何かいい方法、知らない?」

まったく違う言葉だった。

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