第31話 てっぺんを目指せ!

「それを聞くの?」

 図々しくも、先に答えを教えてもらおう…ともくろむ

ジュンペイのことを、呆れたようにサキアは見返す。

「ところであんたたち…本気で行くつもり?」

お遊びならば、これでおしまいよ…と、冷めた目で、

裕太たちを見返した。

「もちろんだよ!

 屋上まで、行ってみたいんだ!」

元気よく答えるジュンペイに…

「大きく出たなぁ~」

ふぅ~んと、サキアは気のない返事をすると、

「私に聞いたって、無駄だと思うわよ」

まっすぐに裕太の顔を見て、ハッキリと言い切った。

「私もね…いつまでもあんたたちに、付き合っても

 いられないのよ」

初めて厳しい表情を浮かべる。

「とりあえず…ミスターを貸してあげるから、よく考えて

 おくことね」

なぜだかサキアは…それ以上は言わなかった。

 今まであんなに親切にしてくれたのに…

どうしたっていうんだ?

裕太はじぃっとサキアの顔を見つめる。

「おまえが、トオの中に入るのを、拒んだから…

 気を悪くしたんじゃないのか?」

裕太の肘を突っつくと、ジュンペイは裕太にささやいた。


「えっ、そうなのか?」

 考えもしなかったなぁ~とつぶやくけれど、裕太には

どうしても…そんなことぐらいで、気が変わるような人には

思えない。

なぜならば、この人はかなり肝の据わった人で、百戦錬磨の

達人のように見受けられたからだ。

『自分で考えろ』だって?

一体、どういうことなんだ?

だが…「甘えるな」のひと言だけで、サキアは口を閉ざしたまま、

それ以上は語ろうとはしない。

(ミスター、頼んだぞ)

サキアのボディーガードは、先ほど彼女に頼まれたことを、

思い返していた…


「ねぇ、オジサン!

 どうにかならない?」

 先にトオに戻って行くサキアを見送ると、ジュンペイはミスターを

突っついた。

「どうにか、とは?」

職務に忠実なこの男、けげんな顔で、ジュンペイを見返す。

(それにしても…先ほど、サキア様にあれほど叱られたというのに、

 この子はまだ、こりないのか?)

彼は心底、ジュンペイのことを呆れていた。

(何も知らない、ということは…これほど強いものなのか?)

ケロリとした顔を見ていると、呆れるを通り越して、むしろ感心

してしまう。

「だからぁ~トオの攻略方法とか」

「そんなものは、ない!」

「じゃあ、裏道とか?」

「あるわけがない!」

「そこを、何とか!見学ツアーでもいいよ」

「ないものは、ない!雇い主に怒られる」

「雇い主?」

かたくなに首を振るボディーガードを見て、裕太はジュンペイに

「きっと、サキアさんのことだよ」とささやいた。

「あ、あぁ~あのオバサンね!」

軽くジュンペイが言うので、裕太はあわててジュンペイの口を

ふさぎ

「しぃ~!どこで聞いているか、わからないよ!」

あわてて止める。

何せあの人…地獄耳だもんなぁ~

裕太はつぶやく。

「いいじゃん!

 黙っていれば、わかんないってぇ」

甘えるような口調で、ジュンペイはミスターを見上げた。

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