第39話 あぁ、悲しきルームサービス?

「あっ、あのぉ~

 せめて逆さまは、やめてくれない?」

 裕太の頭が、時折グラグラと揺れる。

頭に血が上りそうで…

せめて普通に、運んで欲しいと思う。

「文句があるのか?」

ややムッとした声が、思いの外近くで聞こえる。

 一瞬、恐怖で身がすくみ…

(オシッコがチビりそうになる)

『ミスター、どうか早く見つけて!』

裕太は心の中で、つぶやく。

 果たして見つけてくれるのかどうか、怪しいところだ…

だが裕太は、賭けに出ることにした。

目印になるように…

だが目立たないように、あるものを落としたのだ。

(頼む、気付いて!)

 なすすべもなく、気が付いた時には…

どこかに連れて来られたようだった。

(さすがに目隠しをされていたので、よくはわからないのだが…)


 車の止まる音がして、

「着いたぞ」と声がする。

さらに再び抱えられて、ドサッと乱暴に下に下ろされた。

「いたたたた…」

裕太は腰を押さえる。

「ちょっとぉ~ここはどこなんだよぉ」

ジュンペイが声を荒げるけれど、男はまったく無視をして、

バタンと音がした。

 おそるおそる顔を覆っていた袋を取り去ると…

そこは、暗くてジメジメとした部屋の中だった。

「ここは、どこだ?」

不機嫌そうに、ジュンペイが声を上げる。

(ジュンペイも、一緒だったんだ)

少しだけ安心して

「さぁ?」

答えようがないので、裕太も頭をひねるだけだ。

「あいつら…何者なんだ?」

そう聞かれても、裕太だって聞きたいくらいだ。

人の気配は、他にはしない。

どうやら2人きりなのか?

暗がりに目をこらした。


 ここには、窓1つとしてない。

もしかして、地下室なのか?

それさえもわからない。

方向感覚も、時間の感覚も全くわからない。

さらには、自分達以外、人っ子1人いないようだ。

「一体、どうなっているんだ?」

さらにジュンペイが、声を荒げる。

「あぁ~ルームサービスがぁ」

せっかく注文したというのに、もったいない…

かなり悔しそうだ。

(そこか?)

裕太は無言で、ジュンペイを見る。

「あいつら…絶対に、許さないぞ!」

あともう少しで、美味しいご飯にありつけたのに…

食べ物の恨みは、怖いんだぞ!

動機はなんであれ、ジュンペイはかなり怒っている。

「そうは言ってもねぇ」

裕太だって、その辺りは答えようがない。

ただ…思い当たるのは、ただ1つ。

「あの人たち…サキアさんのこと、知っていた

 みたいだった」

一体なんでだろう?

裕太は考えていた。


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