第38話 ここはどこだ?

 部屋には、男たちの靴跡が、幾つもフカフカの絨毯の上に、

くっきりと残され、乱暴に倒された椅子が床に転がっていた。


(ミスター、助けて!)

 心の中で、裕太が叫ぶ。

(サキアさん、お願い!助けに来て!)

 裕太の願いもむなしく…

あっという間に、2人は男たちに連れ去られた。

2人の荷物は、ベッドの上に投げ出されたまま…

ジュンペイの靴が、ベッドの脇に転がっていた。


「ねぇ~人違いなんじゃないの?」

 裕太は彼らの説得を、試みる。

なぜなら…こうして連れ去られる理由が、他には思いつか

なかったからだ。

 だが全く、相手にはされない。

(もしかして、声が聞こえないのだろうか?)

急に裕太は、焦りを覚える。

このままだと…ボクたちは、何をされるか、わからないぞ…と。

 だが主犯格の男は、まったく返事をしない。

「だからぁ~ボクたちは、サキアさんの親戚でも、隣人でも

 何でもないんだよ!」

それでも裕太が、イライラした口調で、男の背中で言うと、

ようやく男が立ち止まった。

「じゃあ、何で…あの女が、お前たちをかまうんだ?」

母性本能?

あるわけがないだろ?

男は鼻で笑った。


聞いていたんだ…

まずいこと、聞かれたなぁ~

だが、この最悪の状況は変わらない。

何とか逃げる手立てを、考えなくては。

裕太の小さな灰色の脳細胞が、フル回転で動く。

だが…さすがにまだ、経験値が浅いせいか、残念ながら

今の時点では、何も思いつかなかった。

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