第268話 もはや、笑うしかない…
「おい、こら!」
「待てよ、ドロボー!」
ちょっと目を離したすきに、ジャックはトイレから飛び出す。
タタタタタ…
ものすごい勢いで、駆け出す。
ジュンペイもあわてて、その後をダッシュで追いかける。
ジュンペイも、かなり足が速い方だけれど、見た感じ、それよりも
さらにジャックの方が早い。
まるで世界記録更新する勢いだ。
「こら、待て!」
ジャックが踊り場に飛び出すと、階段の手すりにまたがり、ひょいっと
身体をおどらせる。
「あっ!」
あっという間に、その姿が消えた。
「くそっ!」
くやしそうに、ジュンペイが叫ぶ。
「あのロープを、外さなければ、よかったなぁ」
ジュンペイの言葉に…
裕太はうなづけない、と思う。
例えロープをつけたところで、ジャックが抜け駆けして、
さらに早く逃げるだけだ。
だがそれを、うかつにもジュンペイには言えない。
「残念だったな」
ジュンペイに声をかけると、
「おまえも少しは、追いかけろよ」
逆にジュンペイが切れた。
「やっぱり…マーサさんが探していたのは、ジャックだった
んだなぁ」
裕太はボンヤリとそう思う。
せっかく見付けた鍵は、ジャックに持ち去られた。
あの金貨の入った袋もだ。
ジュンペイは、ジャックにすべてを持ち逃げされたので、
かなりイライラしている。
「まぁ、いずれにしろ…
アイツのことは、放っとけばいいんじゃないか?」
やや投げやりな口調で、裕太を見る。
そしてふと、思い出したように、
「それよりもさぁ~気になる所があるんだ」
ジュンペイは、ニヤリと笑った。
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