第292話 ついに巨人が…

「えっ、なに?何なんだよぉ」

 せっかく来た、というのに、裕太が帰ろうと言い出す。

思いきり顔をしかめて、納得できることを言わないと、

ここからテコでも動かないぞ、とジュンペイは思い切り顔をしかめて、

不満そうにブツブツと文句を口にする。

「いいから!早く、それから、手を離して!」

これでは自分で、自分の首を絞めることになるんだぞ、と裕太は焦る。

まるで引きずるようにして、ジュンペイを力づくで引っ張って、とにかく

非常口を探す。


ピーピーピー

ドロボーです、ドロボーです。

ピーピーピー

侵入者を感知しました。

通報します。

さっきからずぅっと、この音声が繰り返し流されている。

(どうしたら、いいんだ?)

このままだと本当に、巨人が起きてしまう。

アチコチに、目を泳がす裕太だが、ジュンペイはさほど慌てていないようだ。

「いいから、そのハープから手を離すんだ!」

テンパッタ裕太は、甲高い声を振り絞ると

「え~っ、せっかく見つけたのにぃ」

耳がキンキンするほどの、アラームに負けないくらい、大きな声を張り上げて、

ジュンペイは裕太に向かって怒鳴る。


「さっきから、キーキーキーキーうるさいなぁ。

 おまえたち…ここで一体、何をしているんだ?」

 いきなり野太い声が、天井の辺りから聞こえてくる。

「えっ、だれ?」

聞き覚えのない声に、一瞬ボーっとするけれど…

すぐに、冷や汗がドバっと、裕太の背中に伝う。

(まさか…見つかった?)

振り返るのが、怖い…

だが恐る恐る、裕太が振り向く。

すると…目の前に巨大な岩山が、デーンとそびえて、ズシンズシンと音を立てて、

こちらに向かって、近付いて来るのが見えた。

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