第291話 ドロボー?

 裕太がジュンペイの袖を引っ張ると、ジュンペイに合図を送る。

ようやく「あっ、そうかぁ」と、何事かを納得したようで、

ジュンペイは素直に、スルスル~と滑り降りて来る。

(ふぅ~)

裕太はため息をつく。

何とかジュンペイに、余計なことをさせないように、阻止出来た…

そう安心していると…

ところがどっこい!

裕太のすきを見て、ジュンペイがサッとハープの側に、躍り出た。

「おい!何をしているんだよ!」

タタタタタ…

猛然と駆け出すジュンペイを見て、裕太は抑え気味の声ながら、

どうにか引き留めようと、手を激しく振る。

(おい、何をする気なんだ!)

ハラハラしながら、見守ると…

巨人の元を通り過ぎ、今度は暖炉の側にまで走って行く。

おもむろにヒョイと、今も音を奏でているハープを、無造作に

小脇に抱える。

 すると先ほどまで、軽やかな曲を奏でていたハープが、突如として

異音を発する。

ピーピーピーピー

ハープの美しい音色ではなく、大きな電子音を鳴らすと

「ドロボーです。

 ドロボーです。

 侵入者を感知しました。

 通報します」

合成音の音が、大音量のアラームと共に鳴り響く。

ゴォ~ゴォ~と響いていたイビキの音が、ピタッと止まる。

(ヤバイ!巨人が起きる!)

裕太はあわてて、ジュンペイに手を振ると、

「おい!ハープを黙らせろ!」

アラームに負けじと、大声で怒鳴った。

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