第46話 地下の住民たち
トオ…
それは、たくさんの欲望と希望の象徴。
その姿に、恐れを抱き、見るものを惹きつけてやまない、
独特の風貌である。
ポツンと立つ、異形の建物はいつ出来たのか、
定かではない。
あるものには美しく、
あるものには、まがまがしく映る。
そこには絶えず、冒険者たちが現れる。
まるで、ゴールドラッシュの一攫千金を狙う男たちのように…
「なんだって、人を殺したりするの?」
ジュンペイは、男をにらみつける。
チラリと廊下に、人の足が見えたからだ。
男はごまかそうとするけれど、
子供扱いをするな、とジュンペイは虚勢を張って、思い切り
背筋を伸ばした。
男はハハハ…と笑うと、
「まぁ、いずれわかるさ」と言うだけだ。
「キミ…何でここにいるんだ?」
「誘拐されたんだよ!」
「そうじゃなくて…どうして、この町にいるんだ?」
あらためて、ジュンペイの顔を見た。
「ボク?」
男に言い返そうとして、顔を見上げた途端、急に裕太のことが、
心配になってきた。
「それよりも!」
男を揺さぶるように、腕をつかむ。
「ボクの友達が、まだ、あそこにいるんだ!
助けに行かないと!」
あわてて元来た道の方に、身体を向ける。
男はジュンペイの肩をつかむと、
「止めとけ!
今行くと、何をされるか、わからないぞ!」
ぐぃっと強い力で、捕まえる。
「いやだよ!」
ジュンペイは身体をよじる。
「だって、裕太は…ボクのことを信じて待っているんだ!」
急がなくちゃ!
ジタバタと足踏みをする。
男の力は、思いの外強い。
子供の力では、どう頑張っても無理だ…
「大丈夫だよ!
今頃…ボクの仲間が、キミの友達を助けに行っているはずだ」
穏やかな声で、諭すように言う。
「うそっ!」
ジュンペイは思いきり、男の腕を振り払う。
「オジサン、何者?
何でボクの友達がいるのを、知ってたんだよぉ」
これは、ワナなんだ。
ボクは、だまされているんだ。
ジュンペイはさらに、男の顔をにらみつける。
「誤解されたら、困るなぁ」
ヘラヘラ笑いながら、男はジュンペイの肩を、ポンポンとたたく。
「ボクたちは…アイツらをいわば、監視しているんだ。
子供がさらわれた、という報告を聞いたから、助けに来たんだ」
ようやく、手の内を話す気になったようだ。
「はっ?何で知ってるんだよ!」
まだ疑うように、男を見る。
光の下で見る顔は…まだ20代くらいの若い青年だ。
さっきの男たちとは、明らかに雰囲気が違う。
だけどもジュンペイは、その違いが分かるわけがない。
「まぁ、その辺にしておきなさい」
すると…どこからか、光の輪が現れて、この男と同じような服装
をした、若い男女が現れた。
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