第305話 これって、なんだ?

「お~やっと来たかぁ」

 ようやく裕太に気が付いて、ジュンペイが大きく手招きをする。

「えっ、なに?」

ジャックもジュンペイも、大きな機械音に、全然ビビる様子がない。

むしろ楽しそうに「うへぇ~」と笑いながら、大声で話をしている。

「えっ、ここって、どこ?」

2人の目の前には、大きな穴があいているのか…と思いきや、

その様子もない。

しかしさらに、大きな機械音が響いている。

裕太には、なぜだか嫌な予感しかしてこない。

(秘密の抜け穴って…業務用の通路とか、緊急の通路とか…

 そういうものじゃないのか?)

それに、自分たち子供が、立ち入ってもいいものなのか?

 ジャックが指し示したのは、丁度、犬か猫が通り抜けるような、

蝶番で上の方だけ止めている、小さな出入り口のようなもの

だった。


「えっ、これ?」

 てっきり…これまで通ったような、大きなトンネルだ、と思って

いたのに…これは真反対の小さな穴にしか見えない。

裕太はその場で固まる。

「そうそう、これだよ!」

ニヤニヤしながら、ジャックとジュンペイは、うかがうように裕太を

見ている。

てっきり…壁を押したら、通り道が出来るとか、何かの影にあるとか、

そんなものだと思っていたのだけれど。

(さっきみたいに、暖炉の中とか!)

「ホントに、これ?」

しつこくもう1度裕太が聞く。

「そっ!」

そう言うと…いきなりジャックが四つん這いになると、裕太の目の前で、

ベニヤ板を押して、スルリと穴に身体をすべり込ませた。

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