第304話 準備はOK?

「何だよ、それ~」

「ボクたち、参加した覚えはないぞぉ」

 ブーイングする裕太に反して、ジュンペイは

「面白そうじゃないかぁ」

やけにノリノリだ。

 だがそんな2人の反応は無視して、ジャックはおもむろに時計を

取り出す。

「よーい、スタート! 

 チッチッチッチッチッ…」

いきなりふざけて、ストップウォッチの真似をする。

「おっ」

ジュンペイはすぐさま、大きくうなづく。

「さぁ、準備はいいか?レディー、GO!」

勢いよく手を振り上げると、

「よっしゃー!」

ジュンペイが、ダッシュで飛び出す。

「おっ、やるな、負けないぞぉ」

ジャックもジュンペイに先んじようと、ピョンと跳ねると、その後を

追いかける。

 いきなりのダッシュ!

ロケットスタートだ。

「おい、どっちへ行くんだよぉ」

出遅れた裕太は、置いてきぼりを食らう。

「ほら、おまえも早く来いよぉ!」

前方から、ジュンペイの声だけが、響いた。


「え~っ!」

 ホントに2人とも、勝手なんだからぁ~

ブツクサ言いつつ、裕太もその後を追いかける。

走り出す2人の背中は、前になったり後ろになったりしている。

コンクリートの壁は、かなり頑丈で、確かに即席で掘った穴とは、

明らかに違いそうだ。

 だが、何よりも…灯りがついているのが、ありがたい。

非常灯のように、オレンジの光を通路に、投げかけている。

懐中電灯はなくさないようにと、背中のリュックにしまい込み、

裕太はジャックとジュンペイを追いかける。

すると…

ゴォ~ッという、何か機械的な音が、すぐ先で聞こえてきた。

(なに?)

地下鉄でも、エレベーターの音でもない。

ミキサー車のような、排気口のような音?

(なんだ?)

思わず裕太は、身がまえる。


 何だかここだけを見ていると、さっきまでの家の様子が、嘘のようだ。

まるでハイテクな機械でも、あるのだろうか?

辺りを見回す裕太の目の前で、2人が楽しそうに話しているのが、眼に入った。

「ジャック~おまえ、なりは小さいけど、中々やるなぁ」

「ジュンペイこそ!」

いつの間にか、すっかり打ち解けて、無二の親友のように、和気あいあいと

話しているのが見える。

「おーい!」

ひとまず裕太は、声をかける。

まさか…目的の隠し通路って…

この近くか?

(どこ?)

該当の大きなトンネルも、扉も見当たらない。

どういうこと?

だがジャックもジュンペイも、裕太に気付く様子がないので、

しかたない…とにかく近付いて行く。

すると機械の音がさらに大きくなり、自分の声がかき消されていることに

気づいた。




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