第9話 いざ、行かん!冒険の旅へ?

 サキアには脅かされたけれど…さほど子供たちは気にならないようで、

ジュンペイは真っ黒な瞳を彼女に向けると、

「うん」と答えた。

そんなことなど…かまっていたら、宝探しなど、到底出来っこないのだ。

「ねぇ~そんなことより、お腹がペコペコなんだけどなぁ」

たまらず裕太が、情けない声を出す。

 昨日から何も食べていない、というのに…

ジュンペイは平気なのだろうか?

それともさっき、何か食べて来たのか?

 1人で?

 それは、ズルイだろ?

恨みがましい目で、ジトッと彼の方を見る。

(食べ物の恨みは、怖いんだゾォ)

 だがジュンペイは、ヘラッとして、

「あっ、そぅかぁ~

 裕太はさっき、起きたばかりだもんなぁ」

なぜだかとても元気な声で、ニヤニヤしながら言ってのける。

だが…裕太はお腹が空きすぎて、言い返す気力もないのだ。


「ねぇ、オバサン!何かない?」

 ジュンペイは、ギョロリとした目を、サキアに向けた。

(オバサンじゃないと言うのに)

ギッとにらみ返すけれども、まったく平気な顔をするジュンペイに、

もう否定する気にもなれない。

「ない!

 おまえが全部、食べただろ?」

ブスッとした声で言うので、

「食べた?何を?」

ボクは知りません…というすっとぼけた顔を、ジュンペイがする。

(やっぱり、そうかぁ~)

隠し通そうとする」ジュンペイに、裕太は裏切られた気分になる。

(なんでだぁ?)


 そう言われれば、この部屋…

さっきから、何かいい匂いがしていたんだ。

この匂いは?

「そうだなぁ~ボク、いいとこを知ってるよ!」

ニコニコしながら、ジュンペイは裕太を見る。

何気なく、サキアの顔に目を留めると…

(あっ、口元に…何かがついてる?)

「あっ、青のり!」

たまらず、裕太が叫ぶ。

ヤバッ!

サキアはパッと口元を隠すけれども、時すでに遅し。

「そうかぁ~2人でたこ焼き、食べたんだぁ~

 いいなぁ。

 ズルいなぁ。

 ボクも、欲しかったなぁ」

ボヤく裕太をチラリと見て、共犯者は互いの顔を見合わせた。

裕太は顔を真っ赤にして、2人をにらみつける。

そうか、バレなかったら、ごまかす気だったんだ。

ボクを…仲間外れに、したんだ。

一個くらい、残してくれたらよかったのに!

この…人でなし!

 思わず、ウルッと涙が出て来た。


「おまえ~そんなことぐらいで、泣くなよぉ」

励ますジュンペイの吐く息からも、そういえば、ソースの匂いがした。

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