第10話 腹ペコ大魔王、今日も行く?
「焼きそば?
いや、たこ焼き?
そうか、たこ焼きの匂いがするんだ。
いいなぁ、たこ焼き!
ボクも食べたかったなぁ、たこ焼き!」
ワァワァと泣きながら、裕太はサキアの顔を見る…
「そんなもの…ここには、ないぞ」
だが、あくまでも白を切り通すつもりだ。
裕太は完全に壊れた。
涙腺も壊れ、堪忍袋の緒も切れ、
ジュンペイの友情も破れ、
破れかぶれの気持になった。
あれ?
でも、何かある?
クンカクンカ、犬のように匂いをかぎあて
(お腹が空いていたら、何でもするらしい)
裕太は目ざとく、何かを見つけた。
「あるじゃん、そこに!」
おもむろに、ゴミ箱を指差す。
「なに?何もないわよ」
引きつった笑顔を浮かべつつも、裕太の視線に気付き、
あわてて目をそらす。
(恐るべき、嗅覚だな)
サキアはため息をつく。
(だから、子供は苦手なんだ。
ほとんど動物だもんな)
そんなサキアの思惑にも気付かずに、
「あっ、ズルーい、自分だけ!」
口をとがらせ、裕太が叫ぶ。
何しろサキアの前歯には、青のりがべったりとついていたからだ。
これは、動かぬ証拠だ!
(もう、ごまかしがきかないかぁ)
そう思うサキアの目の前で、裕太はまだクンクンと匂いを
嗅いでいる。
(まるで、犬だな)
思わず苦笑いを浮かべた。
「わかった、行っておいで」
裕太に向かって、微笑む。
「そうこなくちゃ!」
ガゼン、子供たちは元気になる。
「ボクにまかせて!」
ピョンとジュンペイが立ち上がると、ドアに向かって突進する。
「おい、ちょっと待ってよ!」
思い立つと、弾丸のようなジュンペイだ…
捕まえていないと、どこまでも行ってしまう。
「ところでここ、食べ物なんて、ないよね?」
裕太が一応、サキアに聞いてみる。
「そうだ」
サキアがうなづくと、
「何しろここは、素泊まりだからな」
そう自信満々で答える。
金持ちのくせに、ケチだなぁ~
その時裕太は、そう思った。
跳ねるようにして、ジュンペイはさっさと走って行く。
「待ってよ!」
あわてて裕太も追いかけた。
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