第239話 小悪魔ジュンペイ?

「それで、どうするんだ?」

 裕太は、上を見上げる。

もう上がり切ったジュンペイは、何を思ったか、いきなりロープに

手をかける。

「あ、まぁ~

 おい、それよりも、しっかりとつかまれよ!」

ジュンペイの声が降って来る。

いきなりロープが、グラリと揺れた。

「おい、何をするんだよぉ」

危ないじゃないかぁ。

落ちたら、どう責任を取ってくれるんだ?

キッと上をにらみつけると

「いいから、いいから」

すると…ロープが上から、ぐぃぃっと引っ張られるのを感じた。

裕太はヒィッと悲鳴を上げ、

「うわぁ~ムチャするなよぉ」

どうやらジュンペイは、待ちきれなくなったらしい。

それなら…と、引っ張ることにしたらしい。


 グイグイと引っ張られると、ゴンゴンと柱にぶつかる。

「痛い、痛いってば!」

せめて、優しくしてくれよぉと思う。

(足場があれば、自分の足を使って、山登りみたいに出来るのにぃ)

「いいから!

 手を離すなよぉ~落ちるからなぁ」

 それは、まずない。

 むしろ、その逆だ。

振り落とされまい、とロープにしがみついている。

足がブラブラするので、バランスを取るのが難しい…

「それにしても…おまえ、重いなぁ」

大きな声で、文句を言うジュンペイに

「おい、調子に乗るなよ」

あとで、覚えておけよ…と思う。

「もうちょっと、丁寧に引っ張れよぉ。

 ロープが、切れるぞぉ」

ユラユラと不安定に揺れるので、さすがの裕太も、悠長にかまえては

いられない。

「おまえ、贅沢言うなよな!

 そんなに言うなら、自力で上がってこいよ」

ムッとしたのか、ジュンペイはそう叫ぶ。

「もう引っ張ってやらないぞ」

そうひと声上げると、急にピンと張ったロープが、ズルリと揺れた。


スルスルスル…

あっという間だった。

裕太は、何が起こったのか、すぐにはわからなかった。

「お、おい!」

目の前で、すさまじい勢いで、ロープが落ちて来る。

「おい、冗談だろ?

 ちょっと、やめろぉ~!」

押さえきれず、裕太が悲鳴を上げる。

あはははは…

けたたましい笑い声がして、

「冗談に決まってるだろ?

 なんだよ、その顔は!」

まるで小悪魔のように、イタズラっぽい表情を浮かべると、

腹をかかえて笑う。

「おい!しっかりつかまれよ!」

そう叫ぶと、今度はものすごい力で、ぐいっと再びロープを

つかんだ。

 

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