第230話 拾え、拾え、どんどん拾え!
ひそかに心配していた、卵の大きさだけれど…
普通に見かけるものよりは、かなり大きい。
ガチョウ?
いや、ダチョウくらい?
まさか、恐竜の卵?
(見たことは、ないけれども)
身体をかがめて、1つ手に取ると、ずっしりと重い。
「なんだ、思ったよりも、重いぞ」
ジュンペイが嬉しそうに、声を上げる。
「そうなのか?」
裕太はそっと、卵の表面を触る。
ツルツルしているのか、と思いきや、普通の卵のように、
ザラザラとしている。
思い切って、両手で抱えると、ズシリとした重量だ。
(カゴに入れたら、けっこう重たいぞ)
正真正銘、本物の卵だ、と感じる。
「あった?
それじゃあ、カゴにどんどん入れて!」
マーサの声が聞こえる。
「わかったぁ!」
裕太が元気よく返事をすると、腕まくりをして、ニワトリの
側に近寄る。
ジュンペイはもうすでに、ニワトリの近くに来ていて、せっせと
卵を拾い上げている。
「おっ、けっこう重たいなぁ」
うぇ~っ!
ジュンペイの声が響く。
「落とすなよぉ」
「わかってるってば!」
そこから互いに競い合うようにして、せっせとカゴと卵を往復する。
鶏は初めは、この侵入者に驚いて、威嚇するように、くちばしを突き出して
怒声を上げる。
だけどマーサが、何かをしたのか、すぐにおとなしくなり、裕太たちを
無視して、せっせとエサ箱に顔を突っ込んだり、歩き回ったりしている。
(懐かしいなぁ~学校の鶏小屋のにおいだぁ)
ふいに裕太は、前の学校の鶏小屋のことを思い出す。
時々野良猫などに狙われて、裕太が近付くと、思い切り飛び掛かって
きていた。
気が強い性格だったようだ。
ここの鶏は、自由にさせてもらえているせいか、それよりも大きいけれど、
案外おとなしい性質のようだ。
2人が夢中になって、拾い集めていると、カゴの中がキンキラキンに
輝き始めた。
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