第229話 卵をゲットせよ!

「それ、普通の卵よ!」

 またも小屋の外から、マーサの声がする。

「え~っ、普通の卵?」

「なぁ~んだぁ」

ちょっと期待していただけに、かなりガッカリする。

(それなら、味はどうなんだろう?)

裕太は、まだ温もりのある金色の卵を見つめる。

「それじゃあ、その卵~カゴに入れて!手早くね!」

またも、マーサの声がする。

「はいはい」

ジュンペイは、面倒くさそうに返事をする。


 その(鶏小屋にしては)立派な小屋の中には、

思ったよりもたくさんの鶏がいる。

よくテレビとかで見かける、養鶏場のように、狭い所に

ギッシリと顔を並べるスタイルではない。

広い小屋の中で、思い思いの場所を歩き回り、餌箱に

くちばしを突っ込んでいる。

「それにしても…何だかでっかいなぁ~」

普通の鶏よりも、倍以上の大きさだろうか。

しかも丸々と肥えて、毛づやもよい。

(きっと肉もうまいんだろうなぁ)

思わず裕太はそう思う。

こんなことを考えて、裕太たちが近付いても、怖がるどころか、

まったく相手にしてこない。

目もくれず、自由きままに、小屋の中をうろつき回っている。

「ねぇ~逃げたりしないの?」

「突っつかれたりしない?」

まさか小屋の中で、放し飼い状態だとは思わなかった。

(しかもかなりデカイので、ぶつかってきたら、ひとたまりも

 ないだろうな)

目の当りにすると、裕太は怖じ気づいた。


「大丈夫よ!この子たち…けっこう賢いから!」

 裕太たちの様子をのぞき込みながら、マーサが得意気に言う。

「よっぽど…機嫌が悪くなければね!」

その一言が、少し気にはなったが…

「さっ、卵探しといきますかぁ」

張りきって、ジュンペイが宣言する。

すでに…そこここに、金色の光が見えている。

それにしても、壮観な眺めだ。

無数の金色の固まりが、点々と落ちている。

「よぉ~し、競争だぁ~」

ジュンペイが、ひと声吠えると、ダッシュで卵の方に突進した。

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