サキアの休日…31
「あっ」
気が付くと…自分たちの周りに、人だかりが
出来ていた。
「何だよ、兄ちゃん!
美人の彼女に、ふられたのか?」
ゲラゲラ…と、ほろ酔い加減の男たちが、ミナトに
ヤジを飛ばす。
「そんなんじゃない!」
いつもは、温厚で無口なミナトが、一瞬目元に、イラっ
とした色を浮かべる。
「こっちへ」
ぐぃっと、サキアの手を引っ張った。
「おーい、兄ちゃん!
女に言うことを聞かせるには…
手っ取り早く、押し倒すのが一番なんだぞぉ」
さっきよりも、年かさの男が、からかっている。
「だから、違うんだってば!」
サキアは、キッと男たちをにらみつける。
「おや、威勢のいい姉ちゃん!
怒った顔も、可愛いねぇ」
「帽子を脱いで、もっとよく見せてよぉ」
ゲラゲラと、さらに笑う。
サキアがキッとにらみつけると…
ブワッと砂煙が立ち上る。
「今回のところは、許してあげる!
もう、ちょっかいは出さないでよ!」
だが…そんなものくらいでは、酔客がおとなしく
なるわけではない。
「姉ちゃん…女は生意気よりも、おとなしい方が、
モテるんだぞぉ」
また、別の声がかかる。
「余計なお世話よ!」
吐き捨てるように言うと…
ひゃあ~と大げさに、騒ぐ声が響く。
「おい、あんなヤツ、ほっといて帰ろう」
ミナトが、サキアの腕をさらに引く。
「起こった顔も、可愛いなぁ」
逃げるようにして、その場を立ち去る二人に、男の声が
追いかけてくる。
もう~やってられないな!
サキアも、さすがにあきらめると、無言のまま、黙々と
近くのビルの中に避難しようとした。
ミナトはあわてて、その後を追いかける。
「かかあ天下だな!」
そんな二人の後ろ姿に向かって、誰かの声が聞こえてきた。
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