サキアの休日…32

「ちょっと、待ってよ」

 サキアがガシガシと、先を歩くので、ミナトは走って追いかける。

一体、どこへ行くんだ?

迷子になっても、知らないぞぉ~

そう思っていると、サキアはピタリと足を止め、

「何で、ここに来たの?」

クルリとミナトの方を、振り返った。

「えっ、なんでって…」

 いきなり自分に、お鉢が向いたので、ミナトは戸惑う。

「何でって…決まっているだろう?

 サキアを止めようと思って!」

強い口調で言い返す。


 マリさんが、心配するから…

キヨラに、そう言われて、ミナトの頭の中で、くるくると言い訳が、

浮かんでは消える。

「止めても、ムダよ!

 私、もう決めたんだもの」

ピシッと、サキアはそう言い切る。

「それに…私がいたら、みんなが幸せになれないし…」

思わずつぶやく。

サキアらしくない、弱気な発言だ。

だがミナトは、それを聞き逃さなかった。

「えっ、なんでだよ」

 そんなこと、あるわけないだろ?

本来、正義感の強いミナトらしく、まっすぐな瞳で、サキアの目を

捕らえる。

「そんなことは、ない…

 キミは…みんなに、愛されているんだから」

わざと『みんな』という言葉に、力を込める。


「本当に、そうかしら?」

 だが急に、いつものサキアの表情に戻り、じぃっとミナトの目を

見詰め返す。

まるで、猫のような目だ。

「そうだ」

そう強く言いながらも、それは本当なのだろうか、と一瞬目に迷いが

浮かぶ。

それを見てとると、

「でも…私ね、18になったら、自分の道は自分で決める…と、決めたの」

ハッキリとそう言い切る。

「だから、いくら言っても、ムダよ。ご苦労様」

サラリと長い黒髪を翻して、背を向けた。

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