サキアの休日…36

「初めて出会ったのは…ここだったわね。

 私が…珍しく外の世界にあこがれて、ここに来た時だった」

 うっとりとした顔をして、キヨラは洞窟に、ポッカリあいた

穴を見あげる。

この穴は、外の世界に繋がる…と言われている穴だ。

竜が毎夜、ここから空に飛び立つ…と言われている。


「ねぇ、竜って…見たことがある?」

 サキアがキヨラに聞くと、

「どう思う?」

初めていたずらっぽい顔をして、彼女はクスクスと笑う。

「私は…あるわよ」

澄ました顏をして、サキアが言うので、

「えっ、そうなの?すごい!」

キヨラは大げさなくらいに、声を上げる。


「しーっ、静かに!見つかるわよ」

 ここは、一人で瞑想をするのは、許されてはいるものの…

世俗な人間と話をしてもいいのは、世話人と付き人の人が

いる場のみ、と厳しく定められている。

ましてや、沐浴をするような、神聖な場所では…

本来、修行の身であるキヨラには、禁じられているのだ。

「あっ」

 そのことに初めて気が付いたように、キヨラはあわてて、口を閉ざす。

なぜだかサキアといると、子供の頃のように、いつも素の自分に

戻るのだ。

「あなたって、本当に…神につかえる人なの?」

サキアはクスリと笑う。

「ホントよね」

二人の間に、穏やかな時が流れた。

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