第369話 イカロスの翼のように…

 ショーンは何かを悟ったように、サキアさんにうなづくと、

「なぁ」

裕太に向かって、話しかける。

「なに?」

先ほどから、ショーンの格闘を見ていた裕太は、いきなり話しかけ

られて、驚いた顔になる。

「イカロスって、知っているか?」

唐突に言うので、何のことだ、と思う。

「イカロスは、空に憧れて…

 高く高く天に向かって上って行ったら、羽を留めていたロウが溶けて、

 翼がバラバラになって、空から真っ逆さまに落ちるんだ」

ショーンは、淡々と話し始める。

(一体、何の話?)

イカロスと今の状況と、何の関係があるのだろう?

何の脈絡もない話に、裕太は奇異に思う。

 するとショーンは、キッと表情を硬くすると、

「さぁ、シェーラ、行くぞ!」

パッと翼を広げて、フワッと飛び立つ。

 先ほどとは打って変わって、シェーラはおとなしく、無駄な抵抗をすること

なく、まるでショーンに寄り添うように飛んで行く。

裕太はハッと気付くと

「ねぇ、ショーン、待って!」

その後ろ姿に向かって、叫んだ。

 このままショーンが、どこかへ行ってしまう…

そんな予感がしたからだ。


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