第370話 どこへ行くの?

「えっ、どうしたの?」

 銀色の鎖を握り締めたまま、ショーンはこちらを向く。

何かあるのか、という目付きで、こちらをうかがっている。

「ショーン、どこへ行くの?」

裕太はようやく、言葉を絞りだす。

するとショーンはヘラッと笑い、

「大丈夫だ、心配はいらない」

急にハッキリとした口調で、裕太に向かって言う。

「ちょっと、この子を…送り届けるだけだ」

チラリと白い犬になった、シェーラの方を向く。


 この子?

 シェーラさんを?

今は銀色の首輪と、リードをつけて、サキアさんに似せた姿から、

もうすっかり、本来の犬の姿に戻っている。

抵抗しても無駄だ…と悟ったのか、先ほどまでの勢いは、影も形もなく、

おとなしい犬へと変貌している。

「送り届けるって、どこに?」

そもそも今ここに、本来の飼い主である、サキアさんがいるというのに?

だが、サキアさんは、ショーンの言うことを黙ったまま聞いている。

裕太はサキアさんに、ショーンを返して、とも言えず、

「あ、あの…」

顔色をうかがって、裕太は彼女を見あげた。

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