第324話 あなたは、だぁれ?

 ピョンピョンと跳ねるように、ジュンペイは十字架目掛けて

走っている。

「もう、しょうがないなぁ~」

裕太はあきらめて、その後を追いかける。

巨人の家と比べると、どうも小さそうだ。

(こんな所を荒らしたら…バチが当たるよ)

裕太はヒヤヒヤしながら、ジュンペイの後ろ姿を見守る。


 それは、もう誰も使っていないような朽果てた建物だ。

すっかり周りのレンガも崩れ落ち、中のステンドグラスだけが、

かろうじて残っているようなありさまだ。

ドアは横倒しになっており、中の様子が丸見えになっている。

(こんなトコ…きっと、何もないよ)

そう思って見ていると…

祭壇の十字架の所に、誰かが立っているのが見えた。

 ピョンピョンピョンと跳ねるようにして、ジュンペイがその人に

近付く。

「ねぇ、オバサン!

 そこで、何をしているの?」

まったく無防備に、話しかける。

敵かもしれない、という頭はまったくないらしく、何ら躊躇する

様子も見受けられない。

(ヤバイ、コイツ!)

その大胆さに、裕太は思わずヒヤリとする。


 その人は、まるで聞こえないそぶりで、無視をしていたのだが…

「ねぇ、オバサン!ねぇってば!」

あまりにもしつこく、ジュンペイが付きまとうので

「オバサン?」

ピリッと眉をしかめると、いきなり鋭い声を出す。

(あちゃ~やっぱり、怒らせた!)

デリカシーのかけらもないんだもんなぁ…

このままではマズイと思い、裕太があわててジュンペイに近付く。

「坊やたち…一体ここで、何をしているの?」

鋭い声で、裕太たちに話しかけた。

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