第325話 雪の女王、降臨?

「えっ」

 裕太がピクリと肩をすくめると、あわてて頭を振って、

「ううん、何もしていないよ」

その女性に向かって言う。

 おっかないけれど、とてもきれいな女性だ。

 誰かに似ている?

裕太はボンヤリと見上げる。

「何か用?」

目が合うと、裕太はぎこちなく、教会の中を眺める。

ステンドグラスの破片が、キラリと光る。

「あの…オバサンこそ、何をしているの?」

 ジュンペイが素っ頓狂な声を上げる。

(バカ!おい、空気を読め!)

この女性が黙っていても、裕太は感じる。

この人は…ただ者じゃない。

何か空気が、ヒンヤリと凍り付くようだ…

「あの子は、だれ?」

 その人はうっすらと微笑むと、ジュンペイの方を指差す。

「あの子?あぁ~ジュンペイって言うよ」

オズオズと、裕太は言う。


 瓦礫の中で、すっくと立ちすくむその人は…

まるで白のクィーンか、雪女のように、青白く透明な肌を

している。

長い黒髪と、濃紺の引こずるように長い裾の服。

 まるで、死神か?

黙って立っているだけでも、何となく…この人のことを、

恐ろしいと思う。

だが、こういう雰囲気の人を…どこかで見たような気がする。

 どこで?

 誰だったっけ?

黙って考え込んでいると…

「もしかして、あんたたち…サキアの所から来た子?」

いきなり、その人が言った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る