第326話 謎の雪女

「えっ、なに?

 サキアさんのこと、知ってるの?」

 ジュンペイはまったく平気な顔で、ともすれば肩を叩きそうな勢いで、

その人に話しかける。

(なんだ?怖くはないのか?)

このジュンペイ…実はサキアさんにもため口だし、元々怖いもの知らず

なんだろうなぁ~と裕太は呆れて見ている。

そういえば、初めてサキアさんに会った時にも、オバサン呼ばわりを

していたなぁ~と思い出す。

(もっとも、自分もだけど)

それにしても、大した度胸だ。

裕太は、ただただ感心するばかりだ。

 ジュンペイはためらうことなく、すぃっとその女性に近付く。

「まるで、雪の女王みたいだ…」

そのたたずまいに、裕太が思わずつぶやく。

「雪の女王?それはいい!」

まさか本人に聞こえるとは、思わなかったのだが…

あはは…

真っ赤な唇を横に引いて、その女性が笑う。

笑うと口裂け女のように、底冷えのする迫力で、思わず裕太は

ゾクッと身震いをする。


「そうだ!」

 ピョンと嬉しそうに、ジュンペイが跳ねると

「ね、サキアさんの姉妹?

 もしかして…お姉さん?」

馴れ馴れしく、初対面の人の顔を、下からのぞき込む。

(おい、止めろ!)

この得体のしれない迫力が、わからないのか?

ビクついている裕太に気が付くと、その女性は

「ふぅーん」と面白そうに、裕太に顔を向けた。

「キミ…名前は?」

その人は、裕太に向かって声をかける。

「えっ…」

 まるで雪女に魅入られたように…

裕太の身体がこわばって、凍り付いたようになる。

「おい、何をしてるんだよぉ」

だがジュンペイは、ヘラヘラと笑う。

「コイツは、裕太!

 裕太、おまえ、案外ビビりなんだなぁ~」

哀れむようにして、ジュンペイが見るので

(いや、お前の方が、おかしいんだろう?)

思わず裕太は、心の中で毒づいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る