第279話 かくれんぼ

 裕太に指摘されてもなお、ジュンペイは全く動ずる

気配がない。

それよりもむしろ…

「あっ、やっぱりわかった?」

悪びれることなく、ニヤニヤしながら言う。

「当たり前だろ?」

お子ちゃま扱いするなよぉ~

(もっとも、まだ子供だけどな)

「あそこに隠れていたんだ」

サラリとジュンペイがそう言うと、

「もう、いいだろ」

その話は、これで打ち切りになった。

「まぁ、とにかく…行ってみないと、わかんないだろ?」

澄ました顔で、ジュンペイは裕太を言い含めるようにする。

まだ、どうもすっきりはしないけれど…

だけど、ジュンペイがそう言うのなら、仕方がない。

裕太は目の前で、大きく口を開けている暖炉を見詰める。

「この中って…何かあるのかなぁ?」

そう言いながらも、段々ワクワクしてきた。

その中に、首を突っ込んでのぞいて見る。

怖いけれど、それを上回るくらい、好奇心が勝っていた。


 裕太はジュンペイの後ろに立つと、袖をぐぃっとまくり上げる。

服を汚したら、後で母さんにとてつもなく叱られる…

反射的に、そう思ったのだ。

ジュンペイは裕太を見守ると、

「さ、行こうか」

頃合いを見計らって、そううながす。

「あっ、うん…」

この中に、入るのかぁ~

一瞬、裕太はその場に立ちすくんだ。

 だがジュンペイは、ためらうことなく、そのままズンズン

中に入って行く。

暖炉の奥には、確かにジュンペイの言った通り、通路のように

なっていた。

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