第280話 中へ!

 裕太はあわてて懐中電灯をつけると、その後に続く。

レンガ造りのしっかりとした暖炉で、どうも部屋の装飾のような

ものだったらしく、煤けている様子もなく…

きれいな状態のまま、まるでトンネルのように、その中から奥へと

繋がっている。

(え~っ!本当に、秘密の通路みたいになってる!)

 だけど何でジュンペイは、これを見付けたのだろう?

ジュンペイの後ろ姿を見ながら、再び裕太はそんな疑問を抱いた。

 さらにジュンペイは、まったく迷いのない様子で、ズンズンと

この通路を進んで行く。

(どうしてだ?来たことが、あるのか?)

だがジュンペイは、そんな裕太の思惑など気付きもしない。

「暗いから、よそ見をせずに歩けよ」

時折裕太に向かって、声をかける。

「階段があるからな!足元には気をつけろよ!」

まるで先輩のような、口ぶりだ。


 それにしても、階段?

一体、この暖炉の奥は、どうなっているんだ?

見せかけなのか?

まさか、忍者屋敷か?

それとも、シェルター?

あれこれと考えるけれど、どれもピンとはこない。

ジュンペイはまるで、この通路の先がどうなっているのか、

すでに知っているような足取りだ。

「ホントに、大丈夫なのか?」

もちろん、詳しい地図も何もない。

何があるのかも、さっぱりわからない。

もしもこの先が、行きどまりだったら、どうするつもりなんだ?

そう、裕太は思うけれども…

「大丈夫だよ」

力強く答えると、ジュンペイはにぃっと笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る