サキアの休日…22
サキアは、にぃっと帽子のつばをつかむと、
「あの頃の男の子って、みんな、弱っちいのよねぇ」
これみよがしに、ふんっ!と胸を張ってみせる。
「黙ってたら、そこそこ可愛かったのに」
聞こえないくらい、小さな声で、ミナトはボソッとつぶやく。
「何よ!
黙っていなくても、可愛いんです」
ワタシに喧嘩を売る気?
何なら、勝負する?
サキアは足を広げて、身がまえてみせる。
それをチラリと見ると
「やめておきます。
トオを制覇したことのある人に、挑むようなバカでは、
ありませんので!」
キッパリと、ミナトは言い切る。
フフッとサキアは、口をゆがめると、
「あなたも、トオに挑戦したらよかったのに。
きっと今頃は…成功者として、有名になっていたかもよ」
そう言う割りには、サキアは肩をすくめて、笑ってみせた。
だがすぐに我に返ると、目の前に迫って来た、地下の洞窟の
入り口に視線を向ける。
「いや、たぶん、ボクにはムリだ…
それにまだ、命をかけるわけにはいかない。
ボクには、しないといけないことがある」
ミナトはそう言うと、さっきまでの和やかな再会のムードが、
再びどんよりとした空気に変わる。
「変わったんだよ、ボクも。
もうあの頃のような、子供じゃあないんだ」
静かにそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます