サキアの休日…22

 サキアは、にぃっと帽子のつばをつかむと、

「あの頃の男の子って、みんな、弱っちいのよねぇ」

これみよがしに、ふんっ!と胸を張ってみせる。

「黙ってたら、そこそこ可愛かったのに」

聞こえないくらい、小さな声で、ミナトはボソッとつぶやく。

「何よ!

 黙っていなくても、可愛いんです」

 ワタシに喧嘩を売る気?

 何なら、勝負する?

サキアは足を広げて、身がまえてみせる。

それをチラリと見ると

「やめておきます。

 トオを制覇したことのある人に、挑むようなバカでは、

 ありませんので!」

キッパリと、ミナトは言い切る。

フフッとサキアは、口をゆがめると、

「あなたも、トオに挑戦したらよかったのに。

 きっと今頃は…成功者として、有名になっていたかもよ」

そう言う割りには、サキアは肩をすくめて、笑ってみせた。


 だがすぐに我に返ると、目の前に迫って来た、地下の洞窟の

入り口に視線を向ける。

「いや、たぶん、ボクにはムリだ…

 それにまだ、命をかけるわけにはいかない。

 ボクには、しないといけないことがある」

ミナトはそう言うと、さっきまでの和やかな再会のムードが、

再びどんよりとした空気に変わる。

「変わったんだよ、ボクも。

 もうあの頃のような、子供じゃあないんだ」

静かにそう言った。

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