難攻不落のあの頂を目指せ!
daisysacky
プロローグ
きっかけは、1通の手紙からだった。
いつものように、家に帰ると母さんが待ちかまえていた。
(ヤバイ!叱られる?
何かしでかしたか?)
クルリと回れ右をして、あさっての方へ行こうとすると、
「颯太君から、手紙が来てるわよ」
怒るでもなく、笑うでもなく、はい、と無造作に手渡された。
ホッとして、ポケットにねじ込むと、
「宿題をさっさとしなさい!」
武士のように、鋭い目を向けられ…あわてて階段を上る。
待ちきれずに、手で封を破って、中を見ると…
そこには、懐かしい颯太の字が並んでいた。
『親愛なる裕太へ
元気でいますか?
ボクはこの間、不思議なトオの話を聞いたんだ。
きっと裕太は、興味があると思う。
すぐに知らせようと思い、手紙を書くことにしました』
やっぱり颯太の字だ。
几帳面なお手本のような字…
ボクのような、デッカクて、あっちこっち跳ねて、書き間違いの
ある字とは違うんだ。
「トオ?」
塔ではないのか?
それはなんだ、と思ったけれど…
そういえば、最近大人たちの間でも、話題になっている、と
チラリと聞いた。
このトオに行って、帰って来ると、ヒーローになれる…というのだ。
本当なのか?
だが、裕太は知らなかった。
このトオに入った者は、生きて帰れる者は、ほとんどいない…
という事実を。
「へぇ~颯太って、こんなことにも興味があるんだ」
何だか意外な気がする。
2人で探した、伝説のトンネル。
廃屋で見つけた、宝のキーワード。
沈みかけの島から、命からがら逃げ出したことは、まだ最近の
出来事だ。
「この前みたいに、2人で一緒に、行けたらいいのになぁ」
だが…残念だけど、この場には颯太はいない。
「面白そうだけどなぁ」
早速、颯太に電話をしよう。
裕太はそう心に決める。
手紙が着いたよ、
行ってみたいな、
どうやって、行ったらいい?
だがこの日、ジュンペイと『近付いたらいけない場所』探しをする、という
約束をしていたのを、すっかり忘れていた。
その手紙は、あわてて机の引き出しに、しまわれたまま、忘れ去られていた。
だが…思いがけない出来事で、再び思い出す日が来る…
ということは、その時の裕太は、思いもしなかったのだった。
つづく!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます