第329話 一か八か、やってやれ!

(よし、一か八かだ、やってやれ!)

 裕太は覚悟を決める。

氷のような冷ややかな視線を、背中に感じると…

思わずブルリと武者震いをする。

「わかりました! 

 じゃあ、この辺りで…何があるのか、教えてもらえませんか?」

何しろ今は、地図がない。

あくまでも、道を開く…という体で、その人に聞いた。

 ジュンペイはというと、さっきから…この廃墟の中を走り回っている。

(もっと真面目に、協力してよぉ)

裕太はちょっぴり不満だ。

こんな大人って、初めてだ。

だけどもこの雪の女王は、思ったよりも手ごわそうだ。

正攻法では、通じない…と思っていた。

(押してもダメなら…こちらから仕掛けるだけだ!)

じぃっと見上げる。

裕太が無邪気な顔を向けると、

「何だ?」

この人には、通用しない。

どうやらこの人は、子供嫌いなのか、まったく表情一つ、

変えたりはしない。

(知らぬふりを通すの…やめて欲しいなぁ)

ならば、何でここにいるんだ?

裕太はそんなことを、感じていた。


 するとジュンペイが「あ~っ!」と大きな声を上げる。

「なに?」

まさかもう、何か見つけたのか?

それとも今度は、何をしでかしているのか?

クルリと振り向くと、シェーラもつられて、そちらの方を向く。

「あ~、あれ!あれだよぉ」

ジュンペイは手を宙に伸ばして、裕太に向かってにぃっと笑った。


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