第272話 それは、穴?
こう見えてジュンペイは、小学生だけれど、金とか
光り物が大好きなのだ。
カラスか、と言いたいところだけども。
「それは、よかったねぇ」
さすがに、ジュンペイほど興味のない裕太は、まるで
他人事のようにうなづく。
「うん!」
愛想よくニコニコすると、ジュンペイはさらに気をよく
したのか
「見て!」
突然上の方を指差す。
「あれ!あそこを見たら、鍵が開いているかどうか、
わかるんだよ」
「あれ?」
あれって、なんだ?
ジュンペイの指し示す方向に目をやる。
だが、いつまでも裕太がキョロキョロしているので、ジュンペイは
じれたようにして、
「ほら!あれだよ、あの穴!」
自分達よりも、上の方にある、大きな穴を指し示す。
穴?
あれが、穴?
確かに、大きな壁にポッカリと開いている。
この穴が?
ポカンとする裕太を見ると、ジュンペイはふふんと鼻をそびやかす
ようにする。
「ほら、普通鍵って、かかっているかどうかって、見えないもんだろ?
だけど、あの穴を見たら、ロックしてあるかどうか、一発でわかるんだ」
得意そうに、胸を張る。
(わかる?なんで?)
それにしても、ジュンペイって…何でわかるんだ?
裕太はさっぱりわからず、目を白黒させる。
「ほらぁ!」
どうも思ったような反応が、返ってこないので…
ジュンペイは面白くなさそうだ。
そうして「あれ」と指し示すと、少し鼻にシワを寄せて、
「だから、こうして斜め前に立ってみろ」
面倒くさそうに、乱暴な手つきで、裕太の肩をさわると、ぐぃっと
立ち位置をずらしてみせる。
「ここから、あの穴を見ると…どうなってる?」
裕太の肩を押して、答えを待つ。
(えっ、なんだ?)
疑いながらも、言われた通りに、上を見ると…
確かに穴の中の様子がよく見えた。
「あっ!」
思わず裕太が、声を上げる。
確かに、棒らしきものが、フックにかかっているのが、わずかに見える。
「だろ?」
「え~こんなトコを見るんだ」
「ここだけだよ」
なんせ、巨人の家だもんなぁ~
ジュンペイは満足そうに、うなづく。
「まぁ、もっとも…
お前の鍵があれば、大抵の鍵は、開けられるんだろうけどなぁ」
羨ましそうに、裕太を見つめた。
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