第149話 あれが…トオ?
「何してたんだよ」
あわてて洞窟に足を踏み入れると、少し先でミナトたちが
待っていた。
「別に…」
そう言いながらも、ニヤニヤしながら、ジュンペイの側に
近付く。
「変なやつ!
それとも…怖じ気づいたの?」
澄ました顔で、ジュンペイをからかう。
「うーん、どうだろうね?」
笑いながら、追いつく。
パンパン!
ミナトが手を叩くと、
「もう少し行ったら…見えてくるぞ」
明るい声で、仲間を励ました。
相変わらずみんなは、そろいの迷彩柄の上下を着て、
足元はガッシリとしたブーツのような靴を、履いている。
さらに忍者のように、軽い足取りで、足音を立てないように
歩いている。
その脇を、光りの輪の中を跳ねるようにして、ジュンペイが
まるで階段を一段飛ばしするように、ポンポンと跳ねている。
その後ろを、裕太はゆっくりと歩いて行く。
今までの道とは違い、何と言うか…
神秘的な感じがする。
まるで…その洞窟自体が、息をしているような。
ドクンドクンと、心臓の鼓動が聞こえてくるような。
大きな竜の体内を、歩いているような…
そんな不思議な感覚さえ、覚えていた。
それでもどうにか、歩き続けると…
ようやくどこかに、行き着いたようだった。
(えっ、ここは?)
思わず驚いた顔をすると…
「終点だ!」
先頭のミナトが、大きな声で宣言した。
そこは、地上からぽっかりと、大きな口を開けたように、
目の前に大きな崖が、迫っている。
「え~っ」
「ここって…どこ?」
思わず裕太は、声を上げる。
あのトオの前の道でも、トオに通じる商店街でもない。
「ここって、地上じゃあないの?」
間抜けな質問だ…
そう思うけれども、うまい言葉が思いつかない。
「キミって、面白い子だねぇ」
楽しそうに、ミナトはトンネルを背にして振り向いた。
「もちろん、地上だ」
「あれは…なに?」
おそるおそる目の前にそびえる、山のようなものを指差す。
「あれが…キミたちの目指すトオだ」
裕太に向かって、大きく手を広げた…
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