第148話 そこは竜の住まう郷…

「昔から、竜がこの地を守っていた…と信じられていたのよ。

 道祖神みたいなもの?

 私たちの先祖は、竜と仲良く共存して生きていたの」

 マリさんはそう言うと、トオのある方向を振り向く。

「あのトオもね、もともと大きな山だったの。

 あの井戸、見たんでしょ?

 あそこから、トオに向かって飛んでいるのは…

 仲間の所へ行っている、と言われているのよ」

「仲間?」

そんなこと…キヨラさんは、言っていただろうか?

「そう」

マリさんは、おおきくうなづく。

「きっと…探しているのね。

 自分の仲間が、どこにいるのか…」

そう言うと、フッと寂しそうに微笑んだ。

「なんだか、可哀想~」

 裕太にも、わかる気がした。

ジュンペイと出会う前は、いつもひとりぼっちで、颯太の

いる町へ帰りたい…と、ずぅっと思っていた。

「私たちが、見付けてあげたら、いいんだけどねぇ」

ため息をつくように言うのを、

「そうなんだぁ」

裕太はすぐにうなづいた。

 もっとも…竜なんて、そんなに何頭もいないだろう。

まさか竜の住むような村が、あるのか?

それって、どこだ?などと、考えたりしていた。


「さ、おしゃべりはおしまい!

 早く行かなくちゃ!

 置いてきぼりにされるわよ」

ややおどけた口調で、マリさんが言う。

「あっ、そうかぁ~」

いつの間に、ジュンペイの姿が見えなくなっていた。

頭の上の竜のレリーフを見上げると、

「ボクが探してあげるからね」

そう話しかけた。

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