第50話 慌てる男たち

「お前、よくもだましたな!」

 薄暗い穴倉のような部屋で、裕太は男たちに取り囲まれた。

「アイツは、どこだ?」

「どこに隠した!」

 まだジュンペイに殴られたところが、痛いらしく…

頭をおさえたまま、裕太に問い詰める。

「さぁ?」

そう言いながらも、どうやら作戦が成功したらしい…

ということに、気が付く。

裕太は乱入してきた男たちを見上げると、肩をすくめてみせる。

すると男は、自分の頭を撫でさすり

「ふざけるな!」

血走った目で、裕太をにらみつける。

「お前たち…とんでもないガキだな!

 アイツ、トイレで爆弾を作りやがった!」

吐き捨てるように言う。

だが裕太は、これは正さなきゃ、と思い

「違うよ!爆弾じゃないよ!」

頭を振って、大きな声で言い返す。

「ほぉ~違うのなら、あれはなんだ?」

男はタバコ臭い息を、裕太の顔に吐きかけた。


 そんな危険なもの…持ってたのか?

男たちは、頭をひねる。

ここへ連れて来た時には、確か何も持ってはいなかったはずだ。

「嘘をつくと、ためにはならないぞ!」

脅すように言うと、裕太はむしろビクつくことなく、

妙に腹がすわった顔をしている。

「バカだなぁ~ただの実験だよ!

 きっとさぁ、試してみたかったんじゃないの?」

ボクたち、子供だよ?

涼しい顔をして言う。

「ふざけるな!」

 まだ後頭部が痛いらしく、タンコブが出来ていないか…

と、先ほどから頭を撫でさすっている。

「まだ幼い子供だから…と、大目に見ていたが…」

男は低い声に、力をこめる。

「こうなったら…お前だけでも、連れて行く」

裕太から目を離さずに、強い口調で言う。


「やっぱり、連れて行くんですか?」

 若い男が、殴られた男になれなれしく話しかけると、

「お前、さっきから何を聞いているんだ?

 本当なら、2人揃って、連れて行くはずだったんだぞ!」

語気荒く、叱りつけるように言った。


(ゲッ!ヤバイことになったぞ)

 裕太は内心、ヒヤヒヤしている。

せめてジュンペイだけでも、逃がそうと思ってはいたものの…

そこからは、全くのノープランだった。

ジュンペイにも、何も言ってはいない。

(しまったなぁ~)

騒ぎに乗じて、逃げるつもりでいたのだが…

自分の甘さに、後悔する裕太だ。

(でも、大丈夫!)

そう自分を励ます。

きっとミスターが、助けに来てくれる。

でなかったら、ジュンペイが助けを呼んでくれるはずだ…

 どうやら、その思惑通りにはいかないのかもしれない…

 まいったなぁ~

 どうしよう…と思うけれども。

今の自分は、何も持ちあわせてはいない。

(これは完全に、手詰まりだ…)

裕太は頭をかかえる。

(しかたない!

 せめてジュンペイだけでも、うまく逃げ切ってくれ!)

そう心の中で願う、裕太なのだった。

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