第63話 得体の知れないラビリンス

 マリさんは、歳の割りには思った以上に、身体も軽く、

ジュンペイと肩を並べて走っている。

まるで忍者か、というくらい、身軽なのだ。

「いい?

 追っ手に見つかったら、とりあえず目の前の部屋に、

 飛び込むわよ」

早口に、ジュンペイにささやくけれど…

そんなので、大丈夫なのだろうか?

何だか急に、不安になってきた。

 丸腰のジュンペイと、最年長のマリさんの取り合わせ、

幾らマジックが出来ても

(ジュンペイには、あの鍵開けは、手品だと信じて疑わないのだ)

子供とオバサン。

敵と戦うには、最も不利だ。

せめてミアさんと手を組んだら、よかったなぁ~

ジュンペイは、今になって、後悔した。


 コンクリートの壁が続く廊下を、ひたすら警戒しながら、

走って行く…

素っ気ない造りで、部屋に札がついているワケでもないので。

どこに何があるのか、

どこに捕まっているのか、

まったく見当もつかないのだ。

 だがマリさんは、視線を巡らせると、

「あの部屋に入ってみましょ!」

いきなり柱に隠れた場所を指差す。

 所々の柱に、ランタンが取り付けられ、ポワッとオレンジ色の光で

照らしている。

(ここって、地下?

 何か…あるの?

白色電球のとは違って、何だか薄暗い雰囲気をかもし出している。

ぞわっと鳥肌が立ち、

(まるで、霊暗室のようだ…)

普段は幽霊を信じないジュンペイも、さすがに怖くなってきた。

それが余計に、この研究施設が得体の知れない雰囲気に感じられる。

先ほどのアラーム音に反応してか、こちらの方も、

バタバタと靴音が響いて来た。

(そろそろ、ヤバイかも…)

落ちつかない気持ちで、キョロキョロしていると、

「今よ!」

マリさんが、鋭く叫ぶ。

パッと黒い影が、向こうの方から、走ってきた。



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