第67話 待ってて、裕太!今、行くよ!
「きれいだ…」
檻の中の人を見て、思わずジュンペイがつぶやく。
「なに?」
マリさんが聞き返すと、
「な、なんでもない」
あわてて口をつぐんだ。
「そうだ!」
突然ジュンペイが思いつき、その人を見る。
金色の翼のある人は、無表情に彼を見た。
「ね、ボクくらいの男の子のいる場所を、知ってる?」
さすがにそれは、知らないだろうなぁと、思っていると、
驚いたことに
「知ってるよ」と返ってきた。
「なんで?」
こんな檻の中にいるのに、どうして知っているんだ?
ジュンペイがポカンとした顔をすると、マリさんとその人が
思わず笑う。
「キミ~わかりやすい性格だねぇ」
朗らかにそう言うと
「悪くないねぇ」
表情が変わらないけれど、どうやらジュンペイのことを
気に入ったようだ。
「どうして知っているかって?
ボクは見た目通り、半分鳥だから…
人間よりも、聴覚が優れているんだ」
そんなこと、当たり前だろ?
澄ました顔で、そう言った。
それからふいに、思いついた…という顔で
「その子のいる場所を、教える代わりに、ここから出して
くれないか?」
交換条件だ。
いきなり彼がそう言う。
(信用して、大丈夫か?)
一瞬ためらい、マリさんの方を見る。
すると思いの外あっさりと、
「あぁ、そうね。そうだったわ」
あわててうなづくと、
「ちょっと待ってね」
すぐに、南京錠に軽く手を触れる。
その人は、金色の瞳を光らせて、まったく動じることなく、
マリさんのすることを、じぃっと見守っていた。
手を動かすことなく、手慣れた様子で、マリさんは軽く
鎖に触れると…
いつの間にか、スルスル…とその鎖がほどけて、カチャンと
音をたてて、コンクリートの床にすべり落ちた。
「ほぅ…」
その鮮やかな手つきに、その人は感嘆の声をもらす。
「ねぇ、どうやったの?」
その手付きが、あまりに巧みだったので、ジュンペイには
やはり、見抜くことは出来なかった。
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