第223話 マーサのお気に入りに?

 裕太はもちろん、そんなことはしない…と信じてはいた

けれど、やはり巨人の女の顏が近付いてきた時…

正直いうと、かなり怖くて、2人とも固まってしまった。

いざという時には、あの目玉を足で蹴ってやれ!

ひそかに、そうも思っていた。

 だけども実際に出来るか、というと、それは別の話で、

やはり無理だろうなぁと、あきらめていた。

せめて何かヤリのような、長いものがあればな!

この際だから、物干し竿でも、ホウキでも釣り竿でも、

何でもいいや!

そう考えていた。


 2人の怯えた顔を見ると、プッとマーサは吹き出した。

「なぁに?私は、あなたたちを食べたりしないわよ!

 ご主人様が、あなたたちを釜揚げにする、と言わない限り…

指1本、触れたりはしないわよ!」

楽しそうに、ケラケラと笑う。

だけど珍しくジュンペイは、すっかりおびえてしまい、裕太の

背中に隠れてしまった。

(ちょっと、押すなよぉ~)

ぐいぐいと、ジュンペイが自分を押すのが、気になるけれど…

この人は、そんなことはしない、となぜだか裕太は信じていた。


 マーサは、まだ固まっている2人を見て、クスクスと笑う。

「大丈夫よ!しばらくは、帰って来ないわ!

 じゃあ私たちは、ご飯にしましょうか?」

そう言うと、にっこりと微笑んで、裕太を見つめる。

「じゃあ、あなた!

 手伝ってくれない?」

「えっ、ボク?」

 いきなり指名をされて、裕太は戸惑う。

大体手伝ってくれ、と言われても、何をすればいいんだ?

「ほら、こっち!」

そう言うと、裕太の身体を大きな指でつまむと、流し台の上に下ろす。

(物を持つにしても、大きすぎるし、包丁だって、ムリだぞ)

一体、何をしろと言うのだろう?

裕太はドキドキしてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る