第171話 サキアさんとボディーガード

(あっ、ミスター…ここにいたんだ)

 すっかりサキアさんの影のように、身をひそめていたので、

その存在を忘れていた。

「何よぉ」

まるで楽しみを奪われた子供のように、彼女はムッとした

顏をする。

「そんなことをして、いいんですか?

 上にバレたら、お立場が…」

遠慮がちに、口をはさむ。

「いいのよ!」

キッパリとサキアさんがそう言うと、帽子を再びかぶり直す。

「だってね、私がこのトオのルール、法といってもいいんだもん。

 私がいいと言ったら、いいのよ!」

はっきりと言いきる。


(なんだよ、それ!

 ワンマンな女王様みたいだなぁ~

 無茶苦茶じゃないかぁ)

サキアの口ぶりに、裕太は呆れる。

(それにしても…ミスター…

 こんな人に振り回されて、可哀想)

 つい、影のように寄り添うサキアさんのボディーガードに、

同情する。

だがその割には、彼はまったく、表情1つ変えない。

彼女のワンマンな行動には、慣れているのだろう…

「そうなんですか?」

割りとすぐに、引き下がる。

 サキアさんは、満足そうにうなづくと、

「あの妙に、上から目線の人たちに…

 たまには、泡を吹かせるようなことをするのも、いいかもね!」

まるで子供のように、嬉しそうにする。


(へっ?何のこと?)

 裕太はキョトンとする。

「子供をダシにするとは、大人げないですよ!」

使用人という割りには、このボディーガードは、サキアさん相手に、

結構ズケズケと切り込んでくる。

(この人…大丈夫?)

首になったりしないか、と心配になる裕太だ。

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