第41話 このミッション、成功するか否か?
「バカだなぁ、裕太は」
呆れたように、ジュンペイが言う。
「何も手がかりは、残していないんだ。
どうやって、ボクたちを探すんだよぉ」
だけど…とジュンペイは思い出す。
裕太が何か、落としてはいなかったか、と…
「そういえば、靴を片っぽ忘れたなぁ」
ごまかすように、ジュンペイは足元を見つめる。
「なんだよぉ、シンデレラか?」
ケラケラと、裕太は声をたてて笑う。
それからフッと表情を引き締めると
「はぐらかさずに、真面目に聞いてよ」
ジュンペイに向かって、口をとがらせる。
このままでは、自分達はここから出られなくなってしまう…
裕太は少し焦っていた。
目が暗闇に慣れてくると…
この中が、洞窟のような岩で出来た場所である、とわかった。
窓もなければ、何もない。
見えるのは、壁だけだ。
ジュンペイは裕太の視線を、目で追うと
「うーん、ここから脱出は、出来ないかぁ」
あせるでもなく、まるで他人事のように、のんびりとした
声で言った。
たった1つある入り口には、もちろん鍵がかかっている。
おそらく外には、見張りがいるのだろう。
「こんな所にいたら…きっと餓死してしまうぞ!」
わざと脅すような口調で、裕太が言うと、すぐさまジュンペイは
「それは困る!」
急に真剣な顔つきになった。
(こいつ、食い意地が張ってるなぁ)
思わず裕太は、笑いそうになる。
そうして「あっ」と何事か思いつくと、ジュンペイの耳に
ささやいた。
「ちょっとぉ~ドアを開けてよぉ」
ジュンペイが乱暴に、ドンドンとたたく。
「おい、うるさいぞ」
すると先ほどまで、シンとしていたドアの向こうから、男の声が
響いて来た。
(やっぱり、いたか…)
裕太は思わず、ほくそ笑む。
「オジサ~ン、早く開けてよぉ!
トイレに行きたいんだよぉ~」
すかさずジュンペイが叫ぶ。
「なんだ?ガマンしろ」
ドン、とドアを蹴る音がして、わずかにドアが揺れた。
「もう我慢が出来ないよぉ~
限界だぁ、もれるぅ~」
ジタバタと足踏みをしてみせる。
「なんなら、ここで…垂れ流しにしたら、オジサンどうする?
臭いよ、汚いよ、困るでしょ?」
わめくように、ジュンペイが叫ぶ。
「はぁ?」
イライラとした声が響き、思わず裕太は身体を縮める。
「なんだとぉ?
めんどくさいガキだなぁ」
ドアの上部にすき間があいて、そこから赤ら顔の男がのぞいた。
「ちょっとは、ガマンが出来ないのか?」
「もう、無理、ここでする~」
負けずにジュンペイも、ドンとドアを蹴る。
「おい、いい加減、黙らせろ!」
別の男も、顔をのぞかせる。
ジュンペイが、顏をしかめて頭を振ると
「しょうがないなぁ~さっさと済ませろよ」
ようやく重たい扉が、ゆっくりと軋みながら開いた。
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