第372話 さぁ、行くぞ!

「えっ、ちょっとぉ~」

 一体サキアさんが、何を言ったのか…裕太たちには、よくわからない。

てっぺん?

お仲間?

何があるというの?

だがショーンは、手のひらの物を、じぃっと見つめているだけだ。

「ねぇ~それは、なに?」

「さぁ、何だろうねぇ」

降りかけたサキアさんが、こちらを向いてにぃっと笑う。


「さぁ、来い!」

 サキアさんがぐぃっとリードを引っ張ると、犬になったシェーラは、

おとなしくついて行く。

さっきとは、まるで違う。

確かに、サキアさんになついているようだ。

それから思い出したように、サキアさんはクルリと振り返ると

「じゃあ、ショーン、後はまかせた!」

ひと声かけると、裕太たちに

「じゃあね!」

Vサインをしてみせて、ヒラリと飛び降りた。


「ねぇ、どうするの?」

 裕太は問いかけるように、ショーンを見詰める。

ショーンはまだ、手のひらの鍵を見詰めている。

「サキアさんの言う通りだ。

 仲間を助ける」

ぐっと、鍵を握りしめた。


「でも…大丈夫なの?」

 裕太は不安そうに、ショーンを見る。

だって、お仲間…といったって、本当かどうかなんて、

わからないのだ。

ショーンはぐっと、鍵を握りしめると、

「それは、頑張るしかないなぁ」

 途方に暮れたように、ボーっと空を見上げている。

その視線の先には、このトオの頂が見えている。

「でも…てっぺんということは、屋上みたいなものでしょ?」

ここからは、頂上がまったく見えない。

 すると、ピョンとジュンペイが顔をのぞかせると、

「そんなの!行ってみないと、わかんないだろ?」

二ッと笑うと、裕太の腕を引いた。


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