第264話 それは、誰のもの?

 先ほど見た、例の袋と同じようなものが、排水パイプの側で、

目立たぬように隠されている。

白いタイルのせいか、古びた茶色の革袋が、かえって目立って

見える。


「えっ、なんだ?これ」

「これって、もしかして?」

ジュンペイが、手を伸ばす。

「あっ、ちょっとぉ!」

裕太たちの様子が気になるのか、ジャックのあわてた声が聞こえる。

「何をしているんだ?」

 だがジュンペイは、聞こえないふりをして、おもむろに袋に

手をかける。

やけにあわてるジャックを見て、何か見られたらまずいものが

あるのか、とさすがの裕太もピンときた。


「あれ、あれ、あれ、あれ…

 何かあるぞぉ~」

 わざとジュンペイが、大げさに声を張り上げると、たちまちジャックは

落ち着きをなくす。

それに気付くと、ジュンペイは楽しそうに笑う。

(コイツ…なんてヤツなんだぁ)

裕太はジュンペイのことを、心底呆れる。

「まさか、ヤバイものではないよな?」

盗んだものとか…

そうつぶやきながらも、怖がることなく、ジュンペイは平気で手を伸ばす。

それは、やけにズッシリとしていて、思ったよりも大きく膨らんでいる。

「よいしょ」

大きな声で、持ち上げる。

「なんだぁ?やけに重たいなぁ~

 これって、何が入っているんだぁ?」

ジャックに聞えるように言うと、袋に手をかける。

 その時…

「やめろぉ!それは、ボクのだ!」

たまりかねたジャックが、ついにトイレの中に飛び込んで来た。

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