第263話 あれは、なに?

「な、ただのトイレだろ?」

 なおもジャックの声がする。

入り口の方を、チラリと見やると

「アイツも、しつこいなぁ~

 かえって、気になるじゃないかぁ」

一体、何があるというのだろう?

ジュンペイはどうも、ジャックのことが気に入らないようだ。

わざと便器の奥へと突進していくと、クルンと後ろに

回り込む。

それからピョコンと顔を突き出すと、

「おい、裕太!ちょっと」

思わず声をひそめて、ジュンペイは手招きをした。


「えっ、なに?」

 今度はどうした、というのだ?

だが裕太は、さして何も期待はしていない。

何もなくてもいい、とまで思っている。

言われるがままに、ジュンペイの側まで回り込む。

ジュンペイは…というと、パイプの側でしゃがみ込むと、

「こっち、こっち」

裕太に向かって、手招きをする。

「なに?」

「いいから、ちょっと来いよ」

どうも何かを、見つけたようだ。

「なんだよ」

そんな所に、何があるというのか?

「いいから!」

さらにじれたように、ややイラついた顔で、裕太を呼ぶ。

「だから、なんだよ」

小走りに近付く裕太に、

「ほら、あれを見て!」

便器の裏側にある、排水管の辺りを指差した。

「あっ、あれ?」

ジュンペイの指し示す方を見る。

テカテカとしたパイプの影に、隠れるようにして、何かが

ソッと置いてあるのが見えた。

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