第261話 見合って、見合って!

 ジュンペイはまだ…ブスッとしたまんまだ。

どうやら、仲間外れにされた…と勘違いしたみたいだ。

何だか重苦しい空気を、漂わせている。

じぃっとジャックとにらみ合いをすること、数分…

すぐに気が変わったのか、ふいっとジャックは目をそらせた。

「なんだ、こいつ?」

大した事、ないなぁ~

勝ち誇ったように、ジュンペイが裕太にささやく。

「さぁ?

 だから、さっきから言ってるだろ?

 たまたまだよ。

 たまたま一緒になっただけだよ」

確かに、手伝ってもらったけれど…

だけど、これ以上ややこしくなるのが、イヤだったので、

裕太は適当にジュンペイに言った。

それでもまだ、敵意をむき出しにして、ジュンペイがジロジロと

ジャックのことを見ている。


(あぁ、もう!)

 裕太は何とか気をそらせようと、

「ねぇ、あそこ…見てみない?」

目の前にある扉を指差した。

それは、洗面所の奥にある扉だ。

「いや」

いきなりジャックが口をはさむ。

(なに?)

なぜか目を泳がせるジャックに、不審な目を向ける。

「いや、あそこは…何もないよ」

明らかに動揺して、顏をしかめている。

それが逆に怪しい…と裕太は疑う。

「なんだよ、それ」

何か隠しているんじゃあないの?

かえって、ジュンペイの興味を引く。

目を光らせて、ジャックを見据える。

「だから、それ、トイレだよ」

そっけなくジャックが言うのを、

「そうかぁ?」

ヘヘッと笑うと、さっきの不機嫌はどこへやら?

ジュンペイはニンマリとする。

「そうだよ!」

ジャックの声がむなしく響いた。

そんなジャックの声を無視して、ジュンペイはタタタ…

と、扉に向かって突進する。

「おい!」

(人の話を最後まで聞けよ!)

ジュンペイは勢いよく、ドアをバンと押す。

「な、トイレだろ?」

少し離れた所から、ジャックはジュンペイに向かって

声をかける。

「ふーん」

そう言いながら、顏を突っ込むと、

「うん、まぁ、そうみたいだなぁ」

そう言いながらも、ジュンペイは中に飛び込んだ。

「ちょっと!

 巨人のトイレだから、ボクたちには、デカ過ぎるよ!」

さらに重ねて言うジャックを無視して、今度は裕太の手を

引っ張った。



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